栄養成分表示おたすけ帖

栄養成分表示おたすけ帖

 身近にある食品のパッケージに、栄養成分が表示されていることはご存じでしょうか?実はこの「栄養表示」は義務ではありませんが、いま、健康志向 が高まる中、ほとんどの食品に記載されています。この表記は厚生労働省の「栄養表示基準」に基づくもので、順番に「熱量」、「たんぱく質」、「脂質」、 「炭水化物(または糖質など)」、「ナトリウム」の必須項目、さらにビタミンやミネラルが項目として挙げられています。このシリーズではそれらの成分ごと に解説していきます。

 今回は「ビタミン」についてです。
 「ビタミン」と聞くと健康的なイメージですが、そもそも「ビタミン」とは何なのでしょう?ビタミンとは、私たちが生きていく上で必要となる栄養素で、そ れ自体はエネルギーや体の構成要素にはなりませんが、物質代謝の調整に欠かせない有機化合物です。基本的に体内合成できない(一部合成可能なビタミンもあ るが、それだけでは必須量をまかなえない)ので、飲食などによる摂取が必要です。

 ビタミンというと野菜や果物を想像しますが、動物性・植物性を問わずさまざまな食品に含まれています。実は、ビタミンはお米と深い関わりがあります。実 は、ビタミンが最初に抽出されたのは「米ぬか」からなのです。1911年、ポーランドの研究者、フンクが、かっけを抑制する因子を米ぬかかから抽出、生命 (=vita)に必要なアミン(=amine:化合物の種類)で「ビタミン」と命名しました。ちなみにこの物質は後にビタミンB1となりますが、フンクが 抽出に成功する1年前にすでに鈴木梅太郎がこれの抽出に成功していました。ともあれ、ビタミンの面からもお米はすぐれ食品なのです。

 ビタミンはいくつかの種類があります。その名前はビタミンAからB、Cと順番に…と提案されたものの、規則が守られずに命名法が乱れたり、物質の解析の 進化により「ビタミン△△」と名付けたものがビタミンでないことがわかってきたりと不都合もでてきたりして、「ビタミン△△」ではなく化合物名で呼ぼうと いう風潮になりました。しかし、ビタミン名は生理作用を表現するものとして捨てがたいとの意見もあり、現在ではふつうビタミンA、B1、B2、B6、 B12、C、D、E、Kは「ビタミン△△」と、それ以外は「ナイアシン」「パントテン酸」「葉酸」など化合物名でよばれています。

 食品の栄養表示によく出てくるのは、以下のビタミンです。主な働きなどを簡潔に紹介します。ナイアシン、葉酸、パントテン酸はビタミンB群に含まれます。ビタミンB群とはビタミンC以外の水溶性ビタミンのことで、ビタミンB群とビタミンC以外は脂溶性です。

●ビタミンA…夜間の視力維持を助け、皮膚や粘膜を守ります。不足すると鳥目に。βカロテン(カロチン)などのカロテンは体内でビタミンAに変化します。
●ビタミンB1…炭水化物のからのエネルギー産出を助けます。不足するとかっけに。
●ビタミンB2…成長促進に欠かせないビタミン。不足すると成長が停止します。
●ナイアシン…不足すると口舌炎や神経症状が。寿命延長に関係するのでは?と注目されています。
●ビタミンB6…たんぱく質からのエネルギー産出を助けます。
●ビタミンB12…赤血球の形成を助けるので、欠乏すると貧血に。
●葉酸…赤血球の形成を助け、胎児の健全な成長に寄与します。
●パントテン酸…脂質代謝に必要なビタミン。
●ビタミンC…抗酸化作用を持ち、コラーゲンや軟骨、毛細管などの生成、コレステロール代謝に有効。不足すると壊血病に。
●ビタミンD…カルシウム吸収を助け、骨の生成に欠かせません。不足すると骨粗鬆症(こつそしょうしょう)に。
●ビタミンE…抗酸化作用があり、老化防止に役立ちます。
●ビタミンK…血液凝固作用に関わります。

 近年ではビタミン剤が多数発売されていますが、上限量を超えると健康障害がおきることがあります。ビタミンはさまざまな食品に含まれているので、基本的 に通常の食生活をしていれば必要量が摂取できます。ビタミン剤に頼るより、さまざまな食品を食べて、何よりも単調な食生活にならないように注意することが 大切なのです。


参考文献
香川芳子監修『五訂増補食品成分表2009』女子栄養大学出版部
日本ビタミン学会編『ビタミンの事典』朝倉書店
東京都福祉保険局『食品に栄養表示するときは』
『日本大百科全書(電子版)』小学館
2009.08.07 Friday 過去の記事 00:00 comments(0)

季節の行事:サネモリさんと虫送り

 季節の行事:サネモリさんと虫送りおくった おくった
稲虫おくった
実盛さんは ごしょろくじゃ
よろずの虫 ついてこい

ようさらぁ いなむし
こんがり こんがり こんがった
ブントンカカァ、トンカカヤ
実盛様のお通りじゃ

 突然ですが、問題です。上記2つの少し奇妙な唱え言は何でしょう?
 正解は、稲にまとわりつく害虫を追い払うための行事、虫送りの際に唱えられていたものです。前者が但馬の上生野、後者が淡路の沼島に伝わるものです。兵 庫県内各地でもかつて(50年くらい前まで)は虫送りがおこなわれ、このような唱え言で害虫を追い払っていたのです。また、唱え言は村によりさまざまだっ たようです。

 ところで、この謎の人物、「実盛」とは誰なのでしょう?
 それは源平合戦で活躍した平安時代末期の武将、斉藤実盛(1111〔一説によれば1126〕〜1183)のことです。保元の乱、平治の乱では源義朝に、 義朝亡き後は平氏に使えた名将だった実盛は、年老いても髪を黒く染め奮戦するも、加賀の国で木曽義仲の軍に討たれ最期を遂げました。ちなみに実盛は義仲が 幼少の頃に彼を助けたことがあり、義仲はかつての恩人を討ち取ったことを知ると人目をはばからずに涙したという話が平家物語にあります。

 実盛の最期にはさまざまな言い伝えがあります。稲株につまずいて討ち死にして稲の虫と化した、田の中で討たれた時に「稲の虫となって怨みをはらしてや る」と言った、など。それらの言い伝えと虫送りとの関連はまだはっきりしませんが、虫送りと斉藤実盛との関係にはさまざまな見解があります。御霊信仰につ ながる見方では、稲の害虫となった実盛の怨霊を慰め祀ることにより虫害を防ぐという考え方に結びつきます。言霊信仰的にとらえると、稲の実(サネ)を守る と音通することから稲の実を守る神とみるという解釈に結びつきます。虫送りのおこなわれる時期は主に夏の土用の始め、あるいは田植え終了数日後にですが、 その時期から田植え完了の共同祝日である「サナブリ」「サノボリ」が「サネモリ」へと転訛(てんか)したという民俗学の父・柳田国男の説も興味深い視点で す。

 「実盛」は、唱え言以外にも登場します。虫送りは一般的に、まず村人が村の社寺に集い神事や法要をおこなった後、たいまつの火を焚きながら、カネを鳴ら し太鼓を叩き大声で唱えながら行列を組み、幟(のぼり)や札を掲げて水田をめぐり、虫を集め村の境界まで送り出すという方式でしたが、西日本の行列では 「サネモリサマ」という藁(わら)の人形を用い、担いだり馬に乗せたりして運ぶ、あるいは船に乗せて送り出すという例が多くみられました。

 ちなみに虫送りは特に西日本で盛んでしたが、これは虫送りの対象の多くがウンカという害虫で、西日本ではその被害が大きかったためであるといわれています。

 現在でも虫送りは主に地域の伝統行事として営まれているところがあり、中には途絶えたが近年復活したという例もあります。今でこそ科学技術の発達により さまざまな方法で害虫駆除が可能になりましたが、かつては効果的な手だてがなく、人々はこのような行事を通じて健やかな稲の成長を願ったのです。


参考文献
柳田国男『定本・柳田国男集』筑摩書房
大島暁雄・松崎憲三・宮本袈裟雄・和田邦平編『日本民俗調査報告著集成 近畿の民俗 兵庫県編』三一書房
福田アジオ・新谷尚紀・湯川洋司・神田より子・中込睦子・渡邊欣雄編『日本民俗大辞典』 吉川弘文館
2009.08.06 Thursday 過去の記事 00:00 comments(0)

日本人の健康はごはん中心の食生活から(保田校長先生)

 日本人の健康はごはん中心の食生活から(保田校長先生)
 私たちが生きていくためには、毎日、さまざまな食べ物が必要となります。これまでの人生を振り返ってみてください。ずいぶんとたくさんの食べ物をいただいてきたことでしょう。そのお陰で、今日の生命があるわけです。
 ところで、私たちの食卓にのぼる食べ物の種類や食べ方は、今と昔ではずいぶんと変わってきています。特に1955年以降の高度経済成長を期に、私たち日 本人の食生活は世界に例を見ないくらい劇的に変化してきたのです。ごはん中心の日本型の食生活は、いつしか朝食はパンを当たり前のように食べ、夕食はハン バーグといった肉や油を使った料理が中心の洋風型となり、便利で美味しい食べ物が当然になってきました。

 確かに、こうした食生活は豊かであり、幸せの象徴かも知れません。しかし、その陰でさまざまな問題が次第に明らかになってきています。

 その一つが健康問題です。確かに子どもたちの体格は大きくなりましたが、かつては老人病と言われていた循環器系の疾患などが子どもたちの間でも珍しくな い時代となってきています。また、特に脂質過剰といった栄養バランスの乱れにより、生活習慣病の一つの指標とされるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症 候群)が若い世代にまで増加の傾向にあります。また、脂質の摂りすぎが一つの原因とされる大腸ガンや乳ガンが増え続けていることも大変気がかりな現象で す。

 脂質の過剰は肉や油を使用した料理が多くなったことだけが原因ではありません。せっかくの脂肪ゼロの食材である野菜にドレッシングやマヨネーズをかけ油 まみれにしたり、おやつとしてスナック菓子やバター味の洋菓子を食べたりといった食習慣も関係しています。かつては野菜のおひたしには油は使いませんでし た。干し柿や干し芋、かき餅、おにぎりなど昔のおやつには、脂肪分がほとんど含まれていませんでした。

 そもそも日本人は欧米人に比べて小腸が長い、乳糖分解酵素(ラクターゼ)が少ない、血糖値を下げるインシュリンの分泌能力がほぼ欧米人の1/2程度と いった身体的特徴があるとされています。そのような面からも、生活習慣病を予防し、便秘を避け、アレルギーやガンを予防する上でも、ごはん中心の和食は私 たち日本人に最適なのです。

 これまで日本は世界一の寿命と健康寿命を誇ってきましたが、その一因はごはん食にあるのです。WHO(世界保健機関)の協力を得た調査によれば、非米食 文化圏は米食文化圏に比べて肥満も高脂血症も多く、心筋梗塞の死亡率はなんと5倍にものぼるというデータが出ています(注)。

 かつて、私たち日本人の食生活では当たり前の食べ物であった緑の野菜、豆類や海藻、そして青魚を見直し、ごはん中心の食生活を実践することが、健康に生きる上で大変重要になってきています。

注)循環器疾患の一次予防に関するWHO国際共同研究センター「高血圧、主要循環器疾患の栄養因子−食事による予防のための国際比較研究−」より
2009.08.03 Monday 過去の記事 00:00 comments(0)
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