日本一のため池地帯

 
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兵庫県にはいろいろな「日本一」がありますが、ため池の数もそのひとつです。

47都道府県中ダントツの1位で、その数は4万4千と2位広島県の2倍以上の数を誇ります。

全国のため池の数が約20万5千ですから、約2割を占めるのです。


県内では淡路島に約2万2千、播磨地域に1万ものため池がありますが、特に播磨のいなみ野台地にはため池が集中し、東播磨地域(明石市・加古川市・高砂 市・稲美町・播磨町)は水田面積に対するため池の割合が日本一のため池地帯です。

このエリアには39ha(甲子園球場13個分)の面積を誇る加古大池、 37haの天満大池など大きなため池が多いのも特徴です。


では、東播磨地域にどうしてこんなにため池が多いのでしょう。

このあたりは、年間降水量は全国平均の約半分という雨が少ない瀬戸内式気候。稲作のために は、ため池で水を確保する必要があるのです。

いなみ野台地は複雑な形状の段丘が連なる台地で水利条件が悪く、わずかな雨水を無駄のないようにためてきたの です。

それとともに、江戸時代の新田開発で作られた用水路の水を有効活用するためにも役立っています。


さらに、もともと水の乏しいこの地域では綿花を育て ていましたが、明治時代に安い外国綿の流入と高額な地租(税)、干ばつに苦しめられてきました。

その打開策として明治中期から大正初期にかけて淡山疎水を 完成させ畑作から稲作へと転換、ため池を利用した大規模な灌漑(かんがい)がおこなわれるようになるのです。


ため池は古くからいなみの台地の人々の生活に密接に関わってきました。

寺田池では大人への通過儀礼として池を泳いで横断させるという風習がありました。

 天満神社の秋祭では、天満大池の中で御輿をかつぎます。

近年ではウインドサーフィンやスケールシップモデルなどのレジャーにも活用され、親水空間としての 役割も注目されています。


また、池は人工とは言え自然が定着し、豊かな生物環境の場となっています。

高砂市の市ノ池公園に絶滅危惧種のオニバス、ミズニラ、ガガブタや珍しいマミ ズクラゲの姿も伺えます。

稲美町の天満大池には稀少植物のアサザが自生し、そのような環境を保とうと、もともとため池に生息し1個体が1日でドラム缶1杯 の水を浄化するというドブガイ(ぬばたま貝)を放流する「いなみ野パールプロジェクト」がおこなわれ、作家の玉岡かおるさんをはじめとするメンバーが活動 しています。


201011_01_2.gifちなみに、ため池の歴史をひもとくと、メソポタミアでは4800年前、エジプトでも4000年前にすでに築造され、日本でも2000年前に畿内を中心に つくられていました。

一般的に水を蓄えて田畑に供給するためにため池が築造されることが多いですが、稲作に関しては水温をあたためて稲の生育に適した温度 にする役割も担います。


降水の多い山間部でもため池がありますが、これは主に温度調節のためのもので、東山魁夷の名作「白い馬の見える風景」や液晶テレビ のCMで知られる信州・奥蓼科の御射鹿池(みしゃかいけ)はその代表的な池です。


参考文献
日本地誌研究所『地理学辞典』二宮書店
姫路市文化振興財団『BanCul 2008年夏号』神戸新聞総合出版センター
いなみのため池ミュージアム ホームページ 
http://www.inamino-tameike-museum.com/
2010.11.01 Monday 兵庫の自慢 00:00 comments(0)