米と古典文学 <万葉集>

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古くから日本人の暮らしに深く結びついていたお米と稲は、古典文学の世界でも頻繁に登場しています。
平安時代に編まれた、現存する最古の歌集「万葉集」にも稲や農作業を詠んだ歌がたくさんあります。その中からいくつかを見てみましょう。


●第八巻 1567

雲隠(くもがく)り 鳴くなる雁(かり)の 行きて居む 秋田の穂立(ほたち) 繁(しげ)くし思ほゆ

作者=大伴家持(おおとものやかもち)
意味=雲に隠れて鳴いている雁が降り立った秋の田の稲穂が繁っているように、(あのひとのことが)しきりに思われます。天平8年(736)9月に大伴家持(おおとものやかもち)が詠んだ秋の歌(4首)のひとつです。


●第16巻 3848

あらき田の 鹿猪田(ししだ)の稲を 倉に上げて あなひねひねし 我(あ)が恋ふらくは

作者=忌部黒麻呂(いむべのくろまろ)
意味=新しく開墾した、鹿や猪が荒らす田でとれた稲を、倉に納めましたが、長い年月がたち、お米が古くなるのと同じように私の恋も古くなってしまいました。


●第4巻 776

言出(ことで)しは 誰(た)が言(こと)にあるか 小山田(をやまだ)の 苗代水の中淀(なかよど)にして

作者=紀女郎(きのいらつめ)
意味=さきに声をお掛けになったのは誰でしょう。それなのに小山田の苗代水のようにお付き合いが途絶えてしまって。紀女郎が大伴家持に贈った歌です。


「万葉集」は、7世紀後半から8世紀後半にかけて編纂された全20巻・約4500首の日本に現存する最古の歌集です。成立については不明な点も多いのですが、大伴家持が最終的な編集に大きな役割を果たしたと考えられています。主な歌人は、額田王・柿本人麻呂・山上憶良・大伴旅人・大伴家持など。

関東・東北地方を舞台にして詠まれた「東歌(あずまうた)」や、筑紫・九州北岸地方での軍備・警護のために連れてこられた人々の哀しい「防人歌(さきもりうた)」などの特長的な巻があり、当時の人々の暮らしや考えを知る上でも貴重な歌集です。

<参照・出典:「万葉秀歌」斎藤茂吉 岩波新書>

2010.07.20 Tuesday お米の話2 00:00 comments(0)