環境共生型の「コウノトリ育む農法」

 環境共生型の「コウノトリ育む農法」

季節はすっかり冬になりました。みなさんの家の近所の田んぼはどんな状況ですか?ほとんどの田んぼは、刈り残された稲の根もとの部分だけが冬枯れのまま…という状態ですよね。ところが、兵庫県北部の豊岡地域では、なんとこれから田植えでもはじまるの?と思うくらい田んぼにひたひたと水が張られています。いったいなぜでしょう?

豊岡地域ではご存じのとおり、20059月よりコウノトリの試験放鳥が開始され、現在では約30羽ものコウノトリが自然の中で暮らしています。そこで、コウノトリの生息に適した環境や生態系を整備・保護・再生するとともに、生き物や人間が暮らしやすい環境づくりに貢献しながら安全・安全な農産物を生産しようとおこなわれるようになったのがコウノトリ育む農法です。

コウノトリ育む農法による米づくりの特徴は、農薬の不使用または削減、栽培期間中の化学肥料の不使用、種もみの温湯消毒(薬品で消毒しない)、地元の堆肥や有機資材の活用などが挙げられ、環境に配慮した手法となっています。田んぼに冬の間にも水を張ることを冬季湛水(たんすい)、春の早い段階から水を張ることを早期湛水といいますが、これらもコウノトリ育む農法による米づくりの重要なステップです。


湛水により田んぼにはコウノトリのエサとなるドジョウやフナなどの小魚、カエルなどの小動物が生息するようになり、コウノトリの餌場となります。加えてハクチョウやカモなどの野鳥も飛来するようになります。しかし、メリットを享受するのは鳥たちだけではありません。水を張るとイトミミズが繁殖し、その糞で土壌はやわらかくなり、雑草が生えても根が張りにくいので抜けやすくなります。また、米ぬかをまいて水を張るとイトミミズのほか乳酸菌も繁殖、トロトロの層が水底にでき、それが雑草の種子を土壌に埋め込み発芽を抑制する効果があります。さらに、カモ類は水に浮いた雑草の球根も食べてくれます。つまり、除草剤なしで雑草を抑えることが可能となり、農薬の不使用または削減にもつながるのです。


食の安全が関心を集めている昨今、農薬や化学肥料を削減し自然の力を巧みに利用したコウノトリ育む農法の米づくりは注目を浴び、生産されるお米は安全・安心、そしておいしいと人気があります。面積あたりの収穫量は一般的な農法より約
1割程度減りましたが、昨今の市場における食の安全や環境問題に対する意識の高さも相まって、通常栽培米の約5割くらいの付加価値がつきブランド化しています。

コウノトリ育む農法による稲の作付面積は、平成
18年度が約70ha、翌19年度がおよそ130ha20年度になると250ha前後と、倍々で増加していますが、それだけこのコウノトリ育む農法が定着してきた陰には、数々の苦労と努力がありました。湛水のタイミング、農薬に頼らない手法など、これまでにない方法ゆえ長い間試行錯誤を繰り返し技術を編み出した農業指導員のみなさんや、冒険ともいえる新しい試みに賛同・協力・実践した農家のみなさんの情熱は賞賛に値します。

「環境共生」というわが国の新しい農業のあり方を問い直したコウノトリ育む農法は今もなお進化し、全国からも注目を浴びています。また、エコツーリズムなどを通じ、産業にも好影響をもたらしています。環境の悪化で一時期生態系から姿を消したコウノトリ。彼らが再び舞い降りた大地には心地よい住みかと、それを支える地域の人たちの愛がありました。



参考資料
兵庫県立コウノトリの郷公園ホームページ http://www.stork.u-hyogo.ac.jp/
神戸新聞WEB NEWS http://www.kobe-np.co.jp/news_now/stork/
2010.05.06 Thursday 健康と環境 00:00 comments(0)