子どもの嗜好と「おいしさ」の継承(伏木先生)

 子どもの嗜好と「おいしさ」の継承(伏木先生)

 ごはんを中心とする和食は、私たち日本人が長い年月継承してきた大切な食文化ですが、そのおいしさのもとになっているのは「だし」の味わいです。 だしにはグルタミン酸、核酸など体をつくる大切な物質が含まれていますが、これらの成分が「うま味」となって、おいしいと感じるのです。
 だしにはうま味のほかに香りがついてきます。うま味は世界共通においしいものですが、たとえば日本ではカツオや昆布のだしが一般的で、イタリアならトマトやアンチョビをよく用いるというようにだしの好みが違うのは、香りの違いにあります。

 うま味は本能的においしいと感じるものですが、香りの好みは後天的なもので嗜好を左右します。幼少の頃からずっと食べ続けてなじんできた香りと、世界共 通のうま味が重なっただしの味が、その国や地域の食生活の鍵を握っています。和食のうま味は教えなくてもおいしいと感じますが、「これがおいしい」と昆布 やかつおの香りのするだしを教えなかったら、成長しても和食のだしを好きにならないし、食べ慣れていきません。親がしっかり教えないと、嗜好というものは 子の世代に引き継がれないものなのです。

 では、子どもの嗜好というのはいつ頃決まるのでしょう。

 大切な時期は離乳期から幼児の頃です。乳児は母のミルクを卒業し、親が食べている食事を少しずつ覚えながら味覚も成長していきます。そんな離乳期やそれ に続く幼児期にだしの味を覚えさせることはとても大切なことです。嗜好がほぼ定まってしまった大人に「これが日本の味」といっても、それまで知らなかった 味を受け入れることは難しいでしょう。自分がそれまで食べてきたものとは違うのですから、当然です。

 大切なことは、だしの味わいやごはんのおいしさを、基本的な嗜好が決定する前に教えることです。いま、子どもたちにだしの味をしっかりと教えていかない と、15年後には日本人の和食ばなれ、ごはんばなれはおそらくもっとひどい状況になってしまいます。食文化を守るためにも、子どもたちに伝統的な「おいし さ」を教えていくいことが必要なのです。


2009.08.25 Tuesday ごはん授業 00:00 comments(0)