親から子へと伝える「食」のあり方

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いま子供たちに対する食育の大切さが盛んに言われています。

食育には、健全な食習慣を身につけさせるほかに、日本の伝統の味を子供に伝えるという目的があると思います。


子供は放っておけば、脂があって甘みがある、欧米型の食事を好きになってしまいます。
私は、将来自分が食べるものの基盤を作るという意味で、子供に日本の伝統的な味を教えることが重要だと思っています。


そのためには日本の伝統的な食べ物、ごはんやだしなど、昔から人々が食べてきたものをおいしく感じるようになることが、一番大事だと思います。


そこで、お父さんお母さんにぜひやっていただきたいのは、ごはんを食べることです。
ごはんをたくさん食べれば自然にそれに合うものを作りますから、野菜もだしも全部ついてきます。

白いごはんを食べるということが子供に伝統の味を伝える一番簡単で効果的な方法だと思います。


日本人のお米の消費量は、高度経済成長以降どんどん減ってきています。

戦前は一人が1年間に120〜130kgのお米を食べていましたが、今では輸入農産物に押されて年間55kgほどになっています。

でも、お米なら日本で作っていますし、農家の人が近くにいて、その地域で作っているわけです。

食育で言われている大事なことはすべて“ごはんを食べましょう”でできることではないでしょうか。


おかずについていうと、日本はごはんのおかずとして西洋のものをうまく取り入れてきました。

これは続けたほうがいいと思います。
家庭で作るハンバーグなどは典型ですが、それをパンにはさんでしまうともう日本型ではなくなってしまいます。

だから、ごはんとおかずという形を変えずに新しい料理を取り入れていくのは大事なことだと思います。


最近では、親と子供が一緒に食事をしなかったり、親が子供に何を食べたいかを聞いたりしていますが、これはあまりよくありません。

食の教育という観点から見れば、親が、長い歴史の中で出来上がった食の文化を子供に与えなければいけないのに、子供が食べたいものを提案して親がそれに合わせるというのは、食育の逆流であり退行だと思います。


ではどうすればよいかと言うと、親は子供の前でおいしそうに食べることです。

これはとても大事だと思います。
無理やり強制して食べさせても子供は嫌いになるばかりです。
子供は親がおいしそうに食べるのを見て「ああ、自分も大人になったらこういうものを食べるのかな」ということを学んでいくわけです。

食の好みは遺伝しません。
好みは、親が子供に教えて初めて伝わっていくものです。

もし子供に何も教えなかったら、食の文化は途絶えてしまうということです。

食べて欲しい味を子供に伝えるのは、早く始めるほど楽です。
幼稚園、小学校に行って子供が自分の好き嫌いを作ってしまってからでは、親が無理やり食べさせようと思ってもすごく大変ですから。


べつに食経験の豊富な子供に育てる必要はありません。
ごはんとだしのおいしさがわかる子供であれば十分です。それには幼児期の「食」がカギになります。まずごはんとだしを好きになる食育を進めてみてください。

平成27年1月一部改訂
2011.03.30 Wednesday ごはんと食育 00:00 comments(0)

「普通の食事」こそ、最も大切なもの

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現在の社会では、さまざまな食物を普通に食べていれば、欠乏する栄養素はほとんどありません。

この「普通に食べている」ということが重要です。


しかし最近は、その「普通の食事」ができない人が増えているといえるでしょう。
それは食べ物が氾濫しているからだと思います。


食べないと体に障る、あるいは問題だという意識が昔の食べられない時代にはありました。

今は、コンビニやスーパーに行けば何でもあります。
食べようと思えばいくらでも食べられるので、食を軽く見すぎてしまっているのだと思います。
特に若い人にはそういう傾向があるかもしれません。


ダイエットというのは、食べ物が豊富にある時代にだけもてはやされる現象で、飢餓の時代にダイエットする人はまずいません。

今はちゃんと食べなくても死にはしないだろうという安心感があります。
それが重なって、最後は生活習慣病や過激なダイエットに結びついてしまっているのではないでしょうか。


何かひとつの食べ物で、健康になるということはありません。
健康というのは、さまざまな食物を摂取できて、うまく代謝が回転しているときに、確保できるわけです。


また、何をどれだけ食べればいいかという場合、「このくらいで大丈夫」という幅は、結構広いのです。

人間は多少の栄養素の偏りに対して適応する高い能力があります。
過剰に栄養素をとれば排泄するか貯蓄するし、少なければ代謝の回転を落とすなりして大事に使っていきます。

人間の身体には恒常性を維持する機構がいつでも働いているのです。
それは人間の身体が困難、不利な条件で栄養学がなかった時代でも長年培ってきたものです。

ですから、普通の生活を送っていれば、何が何ミリグラム必要かなど、あまり神経質にならなくてもいいと思います。


「普通の食事」で、人間にとって一番重要なものは、血糖、つまり、血液の糖分です。

糖は人間の最も大事な器官である脳の唯一の栄養です。
糖分が不足すると肝臓やすい臓、筋肉も分解してしまいますし、血糖値が低下すると昏睡してしまいます。


糖というと砂糖を連想してしまいますが、米やジャガイモに含まれるでんぷん質と砂糖や麦芽糖などの甘い糖は生理的には、ほぼ同じものです。

一般的に栄養学ではでんぷんを含めて糖質といいます。


糖の次に大事なのは、心臓などの臓器や筋肉、神経、血球などを作るばかりでなく、免疫も支えるタンパク質です。

タンパク質の原料となるアミノ酸の多くは糖からは作れませんから、食べなくてはなりません。


それでは脂肪は生きていくうえでどういう関係にあるかというと、結局は身体の中のあまったエネルギーの貯蔵形態です。

必須の脂肪酸がいくつかありますが、微量でいいので「普通の食事」で足りています。
ですから、現代の私たちは、脂肪をそれほど積極的に食べなくても大丈夫です。


そうすると、「普通の食事」をどう捉えるかが、大事になると思います。

それはもちろん栄養素の量で捉えられるようなものではなくて、たとえば、親は何を食べていたか、自分は今、何を食べたいのか、というようなことから考えるということです。


肥満などが問題になる少し前の一般的な日本人の食生活は、いいモデルだったと思います。あの頃のような朝昼晩の食事を基本に考えれば、ほぼ大丈夫ではないかと思います。



<参照・出典:「人間は脳で食べている」「おいしさを科学する」著・伏木亨 ちくま新書>
2011.03.26 Saturday ごはんと食育 00:00 comments(0)

これからの時代の栄養学とは


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現在の栄養学をめぐる状況は大きく変わってきています。

昔は、栄養素の摂取が足りない時代でしたから栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂肪、ビタミン、ミネラルなど)の働きや含量が強調され、食べすぎについてあまり考えなくても良く、何を食べても体にとってよかったのです。

肉を食べるのはいいことだったし、「1日1回油を使いましょう」といった時代もあったほどです。


ところが、1970年代あたりから、日本人の食生活は豊かになって、十分な栄養素を摂りだすようになります。

さらに過剰にカロリーを摂取するようになり、生活習慣病、肥満が問題になり、今に至っているわけです。


私たちは食べ過ぎの時代に入ったわけです。

今ではどうすれば食べ過ぎず、生活習慣病にならないかを考えなければならない時代です。ところがいまだに「○○が体にいい」と栄養素不足の時代と同じことが言われています。

食べ物が豊富な現代は、普通に食事をしていれば、栄養が足りなくて病気になることはほとんどありません。

むしろ、栄養をとりすぎて病気になることの方が大きな問題なのです。


栄養素が足りない時代につくられた今の栄養学は、もう栄養素が足りているのですから、一度、解体したほうがいいのではないかとさえ思います。


今の栄養学が解体したとしたら、次は、「これからの栄養学はどうあるべきか」ということになります。

改めて、栄養学の目的は何なのかを考えてみると、わたしは栄養学の目的は、まず人間それぞれの価値観を認めること、その価値観に応じて支援することだと思います。


とにかく体を強くしたい人、もっと体重を減らしたい人など、それぞれの価値観を認めることです。

それに対して適切な、その人にとっての最大の幸福をもたらす支援をするのが、これからの栄養学だと思います。


たとえば、今の若い人たちのダイエット傾向はとても強いものがあります。
「そんなことすると身体に悪いからもっと食べてもっと太りなさい」といっても、まず聞きません。

ということは、ダイエット傾向を、くだらない行為だといってしまっては、かえって逆効果なのかもしれません。

栄養学という科学である以上、人間にとって幸福をもたらすものでなくてはなりません。


多様化していく人間の価値観と、幸せに対する考え方に、細かく対応していくことが、これからの栄養学の目的だと思います。


つまり、「人間に優しい栄養学」がこれから求められる栄養学の形ではないでしょうか。



<参照・出典:「人間は脳で食べている」「おいしさを科学する」著・伏木亨 ちくま新書>
2011.03.24 Thursday ごはんと食育 00:00 comments(0)

『和風ごはん食は、なぜ健康性に優れているのか?』

 


日本人の、ごはんと一緒に魚、野菜をしょうゆ味と味噌味で食べる和風ごはん食が、もしかすると世界一健康的な食生活ではないかという評価が、専門家の中でされるようになりました。

そのポイントですが、炭水化物:脂肪:たんぱく質のエネルギーバランスが62:25:13くらいの比率にあるという見方がありますが、それは必ずしもきちんと日本人の食生活を分析評価していないと考えます。


皆さんの食生活を改めて見直せば、そのわけがわかると思います。

朝食にはごはん、ハムサラダ、味噌汁、納豆、漬物。
昼食として、子どもたちは学校給食を食べますが、家にいるお母さんやお年よりはお茶漬けと漬物、時にはおむすびと味噌汁のような脂肪の少ない炭水化物中心のものを食べる。


昨日の夕食が肉料理だったときには、今日の夕食をお刺身とごはん、野菜の煮物、味噌汁のような脂肪の少ない食事にするなど、栄養バランスの違う食事をあれこれ食べてはいませんか?


そうです。和風ごはん食はごはんを中心において、おむすびのような脂肪の少ない高炭水化物食から、すき焼きやとんかつごはんのように高脂肪の食事まで。

しょうゆ味料理から油味料理まで。
多様な献立を、自由に食べられることを基本としているのです。


このように栄養バランスを幅広くブランコが揺れるような食べ方を『揺食』(ようしょく)というのですが、この食べ方を子どものときから経験すると、食後の血液性状が大きく違ってきます。

おむすびのような炭水化物中心の食事を食べたあとには、血液中にはぶどう糖とインスリンが流れて暫らくすると血液は綺麗に掃除されたかのように清澄になります。

それに対してトンカツのような高脂肪の食事を食べると、血液は牛乳のように白く濁り脂肪がたくさん流れます。

このような食後の血液内容の変動を通して、全身の細胞は「脂肪の少ない食事もあれば脂肪の多い食事もある」ことを幅広く認識する能力を養います。

それが下地になって、子どもたちは『今晩、なにを食べたいの?』とお母さんに聞かれたとき、体が脂肪をほしがっているかどうかを感じながら、鳥のから揚げとか御寿司とか、食べたい料理を指名するわけです。


揺食を基盤とした『食歴』が豊かであることは、中年を迎えて筋肉が減量・活性をへらし、基礎代謝の低下を迎えたとき、脂肪の分解力低下を体が鋭く認知して、洋食や中華よりも和食、肉よりも魚、炒めものや揚げ物よりも煮物、焼き物、刺身など、低脂肪食を中心に食べることを可能にします。


それに対して、アメリカなどでよく見られるように、ハンバーガー、ピザ、パスタ、ステーキと高脂肪食ばかりを偏食するワンパターンの食歴しかもてない場合、中年をすぎても体は高脂肪食を求め、脂肪の過剰摂取による肥満と心臓冠動脈硬化による心臓病を多発させてしまいます。


和風ごはん食が健康性に優れている理由は、栄養バランスの幅がワイドであるからであり、しょうゆ味から油味まで幅広く料理を食べられることにあるのです。

2011.03.22 Tuesday ごはんと食育 00:25 comments(0)
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